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打ち込み地下室
専用の機材やPCを使って音のデータを入力していく事を音楽の世界では「打ち込み」と呼ばれています。 山本新も主に打ち込みを使った音楽で各地でソロライブショーを繰り広げています。このページでは山本新の音楽制作と打ち込みに関するコラムを不定期で掲載していきます。
打ち込みとの出会い
1998年の冬、僕はベースシストとしてバンドを組んでいて楽曲のデモは家庭用のスピーカー付きキーボードに内蔵されている限られたリズムパターンとベースで作曲を続けていました。12月にドラマーから「バンドを抜ける」との連絡が入り、僕は受話器を置いてすぐに楽器屋へ行きzoomの234というリズムマシンを購入しました。今思えばこれが打ち込みとの出会いですね。それまでは前述の家庭用キーボードのチープなドラム音しか知らなかったので生ドラムっぽく作られた音色に触れ、バンドメンバーも揃っていないのに興奮して創作意欲は増していくばかり。組んでいたバンドはよくある自然解散という形で活動を終えるのですが、デモ曲のつもりが1曲1曲こだわりを形にしながら、そして自分のベース演奏のマズさを目の当たりにしながらの楽曲制作が楽しくて楽しくて仕方ない時期でした。
隼
1999年に入り、カリフォルニア製のフェンダージャズベースを購入して増々曲作りにのめり込んでいきました。春になり街の楽器屋に貼っていたバンドメンバー募集のチラシを見て僕に電話がよくかかる様になり、何人かと会ってだんだんと一緒に演奏するメンバーが揃いスタジオ等で曲作りを進めていました。バンド名も「ヒュマヴォーグ」に決まり楽しくやっていたのですが、制作方針が合わず途中で2組に分裂しました。しかし秋にライブイベントの出演が決まっていたので2組のバンドで参加する事になりました。僕はヴォーカル志望だったタイチ君と活動する事になり、新たにドラムスとギターのメンバーを加えて「隼」というバンドを結成しました。
隼ではMTRでクリック音と鍵盤で演奏したシンセサイザー音を流し、それに合わせてバンド演奏するスタイルで2回ライブを行なった後にドラマーは別のバンド加入の為、ギタリストはサポート期間終了の為それぞれバンドを去っていきました。2人ともすばらしいプレーヤーだったのですが
新しいメンバーを追加する事もなく、打ち込みとリードベースとヴォーカルで隼の活動を続けていく事にしました。ジャズベースにsobbatのディストーションを通した太くてバッドな音色に何らかの可能性を感じていました。左の写真は江坂ブーミンホールでの隼 初ライブ時のものです。
冬になり再びzoomの234でドラム音の打ち込みに加え、プリセットのベース音の高い音域を利用した分散和音の打ち込み作業にもハマっていきました。リズムマシンは良くも悪くもキッチリとリズムを刻んでいくのでベースなどの生演奏の録音に慣れるまで苦労しました。右の写真は1999年冬頃の自分の部屋です...このYAMAHAの
キーボードAn1xはツマミがたくさん付いていてアナログシンセっぽい音作りができました。好みの波形と波形を重ねて自分だけの分厚い音色を作っていく作業が面白かったのですが、いかんせん演奏技術がなかったので鍵盤奏者が片手で充分奏でられる和音を両手を使って必死に弾いて録音していました。打ち込みユニットHAYABUSA
二人組で活動していく事にした隼は楽曲を増やして2000年春からHAYABUSAに名前を改めてライブ活動を始めました。写真は2000年7月アークデューでのイベント出演時のものです。
現在もそうですが自分の打ち込み作業はドラムパターンの制作が最も時間がかかります。楽曲の具体的な音のイメージを想定せず制作中の偶然のひらめきを期待しながら手探りで一人打ち込んでいたのでゴールの見えない作業が続き、力尽きて床に寝たまま朝を迎える事も多々ありました。HAYABUSAライブでのリードベースソロをよりギターソロの様な音にするべく、フェンダーのロスコー・ベック モデル5弦ベースを手に入れ、sobbatのディストーションを通した後更にエレクトロハーモニクスのベースシンセサイザーを繋いでオクターブ上の音も出せる様になりました。
この頃のライブ用打ち込みトラックにはリズムマシンからのドラム音とシンセベース音、生演奏のシンセ音に普通のベースと歪んだリズムベースの音にヴォーカルのコーラスをステレオミックスしてPAに出力していました。ミックスバランスはめちゃくちゃでしたがとても太く暖かいサウンドが特徴的でした。
バリトンギター導入
HAYABUSAの楽曲はいわゆるラブソングや哀愁のあるバラッドが多く「エレキギターの音が欲しい」というVo.タイチ君の希望もあり、2001年初夏からグレコのバリトンギターMSB-1000を使うようになりました。ギターを殆ど演奏をした事がなかった自分にとってベースの音の並び方と同じチューニングでギターの音域まで出せるバリトンギターという存在は数少ない選択肢のうち最も好奇心を刺激させるものでした。鍵盤演奏で録音していたシンセサイザーパートもヤマハのシーケンサーRM1xを導入する事でようやく「打ち込み」できる環境になりました。ドラム音の打ち込みにはzoomのRT323を使い、次にベース音をRM1xで打ち込んでMTRに録音してからバリトンギターでバッキングギターをしっかり録音すれば楽曲の骨組みは概ね出来上がります。普通のエレキギターより低音域がしっかり出るバリトンギターにsobbatのディストーションを通した音色は打ち込みのドラムとベースの音から浮かずにとてもよくなじんでくれました。
生のドラムス,ベース,ギターの3ピースバンドならアレンジと演奏を磨いてゆけば完成度が上がっていくのですが、打ち込みで同様のアンサンブルを作ってライブハウスやスタジオで鳴らしただけでは訴求力に欠ける事を現場を経験して充分に知っていたので楽曲の骨組みの上にRM1xでシーケンスパートを打ち込んでいきます。ヤマハのAWM2音源によるタイトできらびやかな音色の打ち込み次第[音の長さ・音色・音量 など]で楽曲の色や世界観が大きく変わっていきます。しばらく触ってみて「これだ!」と思った機材には大きな信頼をおいて作業するようになりました。いつでも動ける自分専用のオーケストラを持っているかのような気持ちです。 打ち込み作業がより楽しいものになり「あーでもないこーでもない」と悩みながら夜が明ける事がしばしばありました。
(記 2010年12月)
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